サワンナケートから (vol_08)

精練

染め場の備品が整ったところで、煮染めを始めます。糸は染色する前や、生成りのまま使う場合でも、糊付けの前に糸の汚れや脂分を取り除く為に「精練」をします。糸綛を水の中に漬けてから、砧(実際はその辺にある木棒やすりこ木を使うのですが)で打ちます。
始めのうち、糸は水をはじきますが、水を掛けながらトントン、バシバシと木棒でたたき続けると、だんだん糸に水が浸透していくのです。水を掛けては打ち、ひっくり返しては打ち、時々バケツの中で揉んでは又打ちます。中まで水が十分浸透したのを確かめて、しっかり絞ってから、染めたり、糊付けをしたりします。バケツの水は黄土色になっています。
日本で、苛性ソーダがいいとか、ソーダ灰の方が環境に優しいとか、いや、粉石鹸だけで十分だとか、精練方法について色々言われますが、ここのやり方ほどエコロジルカルな方法は他にありません。私はとても気に入っています。村でよく染めていたという、ケーという木の芯材を、村の人から聞いた通り染めてみました。芯材を細かく砕いて、酸っぱいタマリンドウの実と一緒に長時間煮つめて染液を採り、煮詰めます。鮮やかな黄色です。
マンゴーの樹皮は石灰と一緒に煮出すと黄土色が染まります。ココナツの実の皮は、何処にでも捨てる程あります。やたら嵩張るのが難ですが、添加物無しで茶色になります。
マックサテェーと呼ばれる、いがいがの実の中の種は、オレンジ色に、マックリンマイの樹皮の内側は淡緑色で、緑がかったベージュに染まります。数種の基本色と、それぞれを鉄で媒染したもの、淡藍に基本色を染め重ねたもの、藍の濃淡、合計25色が出来ました。
これは今回の成果と言えるものですが、後日、色のコントロールに悩まされ、色数をもっと厳選するべきだった、と反省しました。

達人たち

サバナケートでの作業が始まって、三週間が過ぎた日の朝、村から染織の達人五人が賑やかに到着しました。藍壷二つ、絣の括り台、筬、等と共にいよいよ織りが始まるのです。どやどやっ、とミニバスを降り立つと、いきなり糸を水に漬けて打ち始めます。炭に火を点ける。青竹を鉈で割る。木の板を削る。達人たちは、パンパンと弾む大きな声でおしゃべりをしながらも、筋肉質の手や指はひっきりなしに動かし続けています。たらい一杯の糸が砧で打たれました。
削っていた板は十字に組まれて鍋の底に。その上に青竹を細かく割って編んだ、丸い簀の子が乗せられ、即製の蒸し器になりました。米粉を水で溶いて揉み込み、糊付けした糸がその蒸し器に収まるまで二時間も掛かりませんでした。薪をくべてどんどん蒸気を上げ、蒸し上がる頃を見計らって鍋の蓋を取ると良い餅の匂いがしました。天日に干すと、一時間もすればはや乾燥です。日本の真夏の日照りと似ています。
乾燥した糸は、反物を巻く時に芯にする紙管を20cm程に輪切りにして作ったリサイクルの枠にどんどん巻き取り、枠が四っ巻き上がるとすぐに整経に掛かります。織機に立て掛けた二本の竹の棒に、工場の大工が作った経台を縛り付けた整経台は巾2m、高さ1m程です。糸の出発点一か所で二本引き揃えた状態で綾を取るだけです。右から左へ、左から右へ二、三歩づつ、ゆっくり歩きながら整経していきます。二人交代ですが、他の作業に比べて動作が遅く、経糸を用意するのにはとても時間が掛かり、私達が夕方工房を後にするころになっても、まだ、右に、左に、と歩いていました。

 

 

 

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