サワンナケートから (vol_07)

藍染め

四日目、出社するやいなや、ソンカンに背中を押されて染め場に連れて行かれました。いよいよラハナム村で買ってきた藍液を壷の中に移すのです。ビニール袋に入れてきた藍液を、ゆっくり壷に注ぎ、沈殿しているものには上澄み液を注ぎながら丁寧に残らず壷に移すと、壷の口まで一杯になってあぶくが浮かんでいます。藍液の緑色が少し鈍いようだけど、とにかく糸を染めてみます。壷の横に椅子を置き、両手が壷の中に入る程度に浅く腰を掛け、糸綛を漬けて、ゆっくりと回しながら揉みます。10分程度揉み込んだら、しっかり絞って、糸綛の両端を持った手を上下に伸ばし、その間で糸綛を縮めたり延ばしたりして捌きます。再び、先と同じように染め、絞って、捌く、を3回繰り返したら、水で濯ぎます。水を張ったバケツを3つ用意して、1つ目でゆっくり濯いで絞り、同様に2つ目、3つ目で濯ぎます。その後数回きれいな水で洗います。つのバケツはそのまま毎日使用して1週間ほど経つと、1つ目のバケツの上澄み液を2つ目のバケツに入れて、底に沈殿している藍を壷に戻します。次は2つ目のバケツを1回目の濯ぎに使い、3つ目のを2回目に使って、3回目用に新しい水を用意します。これを繰り返して、少しの藍も無駄にしないようにするのです。今日の藍液は長旅に疲れたような色でした。
染色後、泥藍を一握り、灰汁を柄杓に約七分目、ラオラオ(焼酎)を約50cc加えて混ぜました。翌朝、藍液は驚く程元気になっていて、柄杓で混ぜると鮮やかな黄緑色をしており、糸は美しい紺色に発色しました。染色が終わると、毎日泥藍を加えてよく攪拌します。ラオラオと灰汁は三日に一回です。乾季の暑い頃は朝晩二回、雨季や寒い時は一日一回染色出来ます。藍色と言えば、こちらでは濃藍も黒に近いほど美しく、淡藍は剥げた汚い色、と思われています。藍色のグラデーションを理解してもらうのに苦労し、濃淡の色を得る為に染色回数を数えてみたり、壷に入れるタイミングをチェックしたりしてみましたが、結局、染める度に必要な色の見本と見比べるしかない、と悟りました。

 

紡ぐ

紡ぎ機は日本の物とほとんど同じようです。ソンカンの力量を期待して、ここでは、タイで使用しているようなソフトな手紡ぎ糸とは異なり、紡錘独楽で撚りをかけたような、強撚を依頼しています。ソンカンは手を抜くことなく、確実に撚りを掛けながら、美しい糸を紡いでいきます。村で綿花を買って来てから一週間、ようやく一綛の糸が出来上がりました。紡ぎ機の錘(つむ)は15cm程の長さですが、それが紡いだ糸で一杯になると、かせに巻き取り、また紡ぎ、錘が一杯になると「あみそ」(一錘毎の糸束に綾糸を掛け、糸の乱れを防ぐ)を入れて、かせに取ります。
六錘分を一綛にします。六錘分を1ナイと言い、6ナイが一綛で1トンと言います。ちなみに小さな綛が必要な場合は3ナイを1ポイと言う単位にします。1ナイは約50g弱で、1トンは250~300g程です。ソンカンの他に若い娘が二人、一日中、キー・クルクルクルキー・クルクルクル、と紡ぎ機を回し続けるようになりました。
織り場の中には織機が、毎日一台づつ増えていきます。 工場専属の大工(左官、屋根ぶき、下水工事、等何でも出来る)がちょっとした時間を見つけては作っているのです。サバナケートはこれでも都会なので、電動工具が入っていて、材木を切るのは電気の力です。が、切りっぱなしのまま材木を組み立てて、糸が直接当たる部分には、縫製工場で出る断ち屑の布をぐるぐる巻いています。たいていの人が持っているのは鉈です。鉈一丁で木や竹を切ったり割ったりして、薪を作ったり、魚採りの籠を編んだりします。パパイヤサラダも魚料理も、鉈一丁。糸も切るし、布も切断するのです。

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